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第4話 遺伝子型と体質

講座内容

1.SNP(一塩基多型)

私たちは両親から1対ずつの遺伝子を受けついでいることはすでにお話しましたが、これらの遺伝子によって両親からその配列に特徴的な遺伝子型も受け継いでいるのです。皆さんは血液型の話は良くご存知と思いますが、実は遺伝子型もまた、これと一部似たようなところがあります。

血液型は例えばAB型の父親と0型の母親からは生まれてくる子供達の血液型はA型あるいはB型です。

ただし血液型の場合はA型といってもAOとAA、B型にもBOとBBがあることが違っています。

では遺伝子型の場合はどうでしょうか。 今まで述べたように遺伝子配列はA、T、G、Cの4種類の核酸塩基によって構成されていますが、ここではその長い遺伝子配列の中で、あるひとつの核酸塩基だけが異なる配列について説明いたします。

このように、長い遺伝子配列の中で、ある特定の一箇所の核酸塩基だけが異なるような現象をSNP(Single Nucleotide Polymorphism、一塩基多型)と呼んでいます。

これは遺伝子を形成する4種類の塩基(A, G, C, T)の中で、普通の配列(野生型)がAであるものが、Gに変異する(変異型)という現象で、例えば以下のような野生型の遺伝子配列があったとすると、変異型では、この中で一箇所だけ核酸塩基が異なっています。

つまり、上の配列と下の配列は一箇所を除いてすべて同じ配列ですが、この一箇所だけ上の配列 (野生型) では核酸塩基はA(アデニン)であるのに対して、下の配列(変異型)ではこの箇所がG(グアニン)になっています。

このように遺伝子配列の中の一箇所だけが他の核酸塩基で置き換えられている現象をSNPと呼ぶのです。

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2.遺伝子多型

ひとつのSNPに対して3種類のタイプが存在します。この理由は父親と母親からそれぞれ1個ずつの配列を受け継ぐため、その組み合わせが3通りあるということになるからです。例えば前の例のようにA-GのSNP変異では、以下のようにAA、AG、GGの3通りの遺伝子多型が存在することになります。

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3.遺伝子多型と遺伝

例えば両親の遺伝子多型が共にAG型である場合はその子供達は、両親のA配列とG配列を1本ずつ受け継ぐことになり、以下のようにすべての3通りのSNP型が存在することになります。

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4.疾患関連SNP

以上の組み合わせはあくまで、ひとつの特定のSNPについての確率を示していますが、実際には私たちの遺伝子には沢山のSNPサイトがあり、これらの組み合わせは無数といっても良いくらい沢山存在します。

ただし、無数といっても、あくまで父親と母親に存在するSNP型の組み合わせですから、その組み合わせの範囲に限られます。

従ってこのようなSNP型は、ある意味で私たちの両親のもっている「体質」を受け継いでいるということを示しています。 現在では、これらのSNP型の中で、ある特定のものがある種の特定の疾患と関連があるらしいということが示されています。このようにある特定の疾患に関連したSNPのことを「疾患関連SNP」と呼びます。

ひとつの例としては、いま問題になっている「メタボ関連SNP」が上げられます。つまり、肥満に関連した、いわゆる「メタボ症候群」に関係するある特定の組み合わせのSNP型によって、その人が「太り易い体質」か「太りにくい体質」か、を判別することが可能であるということです。

この肥満関連SNPについては、世界中で研究が行われていますが、わが国でも、女子栄養大学の香川先生や京都府立医科大学の吉田先生などが論文を発表されています。例えば香川先生の論文では、肥満疾患関連遺伝子のSNP型として4種類、吉田先生の論文では9種類のSNP型を発表されています。

もうひとつの分かり易い例はアルコール分解酵素に関するSNP型です。私たちがお酒を飲むとその中に含まれるアルコールは肝臓内で分解されますが、その分解の仕組みは、まずアルコールは肝臓内のアルコール脱水素酵素によって分解されてアセトアルデヒドになります。そして更にこのアセトアルデヒドはやはり肝臓内に存在する「アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)」によって更に酢酸に分解され、さらに酢酸は二酸化炭素と水に分解されて体外に排出されます。

この3つのタイプの中で、GGの組み合わせを持つ人(GGホモタイプ)は最もお酒に強いタイプで、白人や黒人では殆どの人がこのタイプを持っていますが日本人では約半分程度がこのタイプと云われています。

つぎにAGタイプですが、この遺伝子型(AGへテロタイプ)の人は生まれつきお酒が弱い人でALDHの活性はGGホモタイプの約1/16であり、またAAの遺伝子型(AAホモタイプ)では代謝活性を示さず、生まれつき全くお酒が飲めません。

このようにGGホモタイプは生まれつきお酒が強く、幸せのように思えますが、一方では逆にお酒を飲みすぎてアルコール依存症になる危険性があるのです。事実日本のアルコール依存症の約90%はこのGGホモタイプであるという報告があります。またGGホモタイプしか存在しない白人・黒人の社会である欧米では、アルコール依存症が深刻な社会問題となっているのです。

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  • 第2話 遺伝子の働き(1)
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  • 第4話 遺伝子型と体質
  • 第5話 遺伝子診断
  • 第6話 テーラーメード医療
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