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新型コロナウイルス感染症の判定を行ううえで欠かせないPCR検査。地域の基幹病院では通常の診療活動を止めないためにも院内のPCR検査体制の整備が必須となっています。全世界で累計販売台数1,000台を突破した当社のエリート インジーニアスをいち早く導入し、入院・手術患者のPCR検査に役立てる松戸市立総合医療センター臨床検査科の橘髙拡悦技師長にエリート インジーニアス導入の経緯、運用の工夫などを中心にお話を伺いました。

(本インタビューは2021年12月に実施させていただきました。)

千葉県松戸市 松戸市立総合医療センター 医療技術局 臨床検査科 橘髙拡悦 技師長
千葉県松戸市 松戸市立総合医療センター

医療技術局 臨床検査科 橘髙拡悦 技師長

納入製品: エリート インジーニアス

松戸市立総合医療センター様のホームページ

【導入の効果】入院・手術患者を中心に月350~360件のPCR検査を実施

松戸市立総合医療センター(尾形章病院長・600床)は、1950年の開院以来、松戸市の基幹病院として発展してきました。2017年には現在地に新築移転し、病院名を松戸市立病院から現在名に改称。37診療科を有し、松戸市のみならず人口約140万人の東葛北部地域(松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市)の医療を担っています。

救命救急センター、地域医療支援病院、地域がん診療連携拠点病院、地域周産期母子医療センターなどの高度な医療を担い、東葛北部の基幹病院としての役割を果たす。

救命救急センター、地域医療支援病院、地域がん診療連携拠点病院、地域周産期母子医療センターなどの高度な医療を担い、
東葛北部の基幹病院としての役割を果たす。

同センターは三次救急医療機関かつ第二種感染症指定医療機関であるため、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の重症・中等症患者を積極的に受け入れてきました。千葉県の病床確保計画で最高レベルのフェーズ3の段階になるとICUおよび一般病棟のうちの一つを新型コロナ専用病棟とするほか、特定領域の病棟も含め、院内に最大43人収容できる病床を確保しています。

PCR検査については、20年8月に当社の「エリート インジーニアス」を含む最新鋭の検査機器を導入、21年4月からはこれらの機器を操作する専任の臨床検査技師を2人配置し、迅速かつ精度の高いPCR検査体制を整備しています。21年12月末現在、入院・手術が予定されている成人患者を中心に月350~360件のPCR検査を実施しています。

2台のエリート インジーニアスをフル稼働させて入院・手術が予定されている成人患者を中心に月350~360件のPCR検査を実施している。

2台のエリート インジーニアスをフル稼働させて入院・手術が予定されている成人患者を中心に月350~360件のPCR検査を実施している。

「大人数に対するPCR検査を外注せずに自分たちで短時間のうちに実施できるようになったことは、コロナ禍にあっても通常の診療をできるだけ止めないこと、そして流行期が収束し通常の診療活動に戻していく際にも円滑に進められることに大いに貢献しています」

しかし、同センターがこのようなPCR検査体制を整備するまでには紆余曲折がありました。新型コロナが千葉県でも流行し始めた20年3月時点では他院同様にPCR検査を実施できる検査体制は整備されていなかったのです。

【導入前の課題】自院でPCR検査を行えるようにすることは避けて通れない

20年4月に緊急事態宣言が発出されて第1波に襲われる中、保健所ルートによるPCR検査は判定結果が判明するまでに2日程度かかっていました。そのため、同センターでもPCR検査を自前で行うことにし、5月から民間の検査会社に委託しました。

「それでも判定結果が出るのは早くても検体を渡した翌日の夕方で、患者さんがコロナ疑いで救急搬送されるようなケースでは医療活動に大きな支障を来たしました。外注ではなく自分たちでPCR検査を実施することは避けては通れなかったのです」

そこで、臨床検査科では細菌検査室のスタッフが中心となり、7月からLAMP法による簡易PCR検査を実施することになりました。LAMP法はPCR検査と同じく鼻咽頭ぬぐい液などの検体から新型コロナウイルスの遺伝子を検出する方法で、診療所や病院を問わず多くの医療機関で広く導入されています。短時間で判定できる一方、検体処理や遺伝子抽出操作、試薬調整、反応液と抽出遺伝子の混合操作時などにはコンタミネーションに注意しなければならず熟練した技術が必要とされます。そのため、臨床検査科においてもスタッフの配置を含め、検査体制を構築して軌道に乗せるまでに時間がかかったといいます。

橘髙拡悦技師長とともに院内PCR検査体制の構築に携わった鈴木真澄技師長代理(前列)。整備後にPCR検査専任の臨床検査技師(後列右:森村智さん、後列右から2人目:前原信武さん)を配置することができたので、臨床検査科全体の負担も軽減された。

橘髙拡悦技師長とともに院内PCR検査体制の構築に携わった鈴木真澄技師長代理(前列)。
整備後にPCR検査専任の臨床検査技師(後列右:森村智さん、後列右から2人目:前原信武さん)を
配置することができたので、臨床検査科全体の負担も軽減された。

「遺伝子検査は比較的新しい技術のため、20~40代の若手・中堅を中心に精通した者を担当させました。当科のスタッフは再任用、非常勤を含め、総勢50名ですが、常勤スタッフのみ数十名をPCR検査要員として確保せざるを得なかったので、科全体に大きな負担がかかりました。さらにLAMP法がスタートしてまもなく土日稼働の要請が入ったこともあり、臨床検査技師への負担は増大していったのです」

PCR検査の最前線でこのような綱渡りの日々が続く中、松戸市は20年8月に同センターに最新鋭の検査機器を導入し、10月から全身麻酔の手術を予定している患者さんを対象にPCR検査を稼働し始めました。

【導入のメリット】全自動で操作が簡単なことは検査の質を保つうえで重要

このとき採用された2台のPCR検査機器のうち1台が当社のエリート インジーニアスでした。この検査機器の特徴は全自動工程で最大12人分の検体を同時に処理できること。核酸抽出、精製、増幅、検出、解析までの工程を約2時間半で行い、検査の迅速化にも役立っています。

「全自動工程なのでLAMP法に比べて操作が簡単で、どの技師が担当しても確実に行えるのは検査の質を保つうえで重要です。また、検体の取り違えやコンタミネーションなどのミスも起こりにくく、技師の感染リスクを大幅に軽減できるメリットもあります」

ほかのPCR検査機器に比べて操作が簡単で、どの技師が担当しても確実に実施できることが検査の安定につながっている。

ほかのPCR検査機器に比べて操作が簡単で、どの技師が担当しても確実に実施できることが検査の安定につながっている。

エリート インジーニアスは精度の高さでも評価されています。「検出するターゲットが合計3つあり、1つは核酸抽出工程からPCR反応まで阻害や異常がないかプロセスを確認できるIC(インターナルコントロール)を備えていること、加えてウイルスの2つの遺伝子箇所をターゲットにしているため、突然の遺伝子変異にも対応可能で、ターゲットが1つしかない他のPCR検査機器やその前に実施していたLAMP法よりも精度はさらに上がりました」

21年7~8月にかけて第5波が起こったときも入院・手術患者を中心にPCR検査を淡々とこなし、検査現場における混乱はみられなかったといいます。ちなみに同センターでは院内でのPCR検査に取り組むようになってからこれまでに4000~5000人の入院・手術患者に実施してきましたが、新型コロナの陽性者が見つかったのは2人だそうです。

「入院・手術を予定している患者さんは感染対策をしっかり行っていることもあり、陽性者数としては非常に少ないです。しかし、全例検査をしていなければ見逃されて院内クラスターが発生していたかもしれません。PCR検査は患者さんの安全を確保し、医療者への曝露を防ぐうえで欠かせないものなのです」

【運用のポイント】12検体処理の優位性を生かし大人数のPCR検査にフル稼働

エリート インジーニアスは、最初に検体分の試薬をセットすると後から追加できないため、「緊急で1件だけPCR検査をしたい」といったニーズには対応しにくい面があります。そこで、同センターではこのニーズに対応できる他のPCR検査機器と組み合わせて運用しています。

「大人数に対応するのはエリート インジーニアスが最も優れており、21年1月には追加でさらに1台導入しPCR検査体制の効率化と迅速化を図りました」

検体と試薬をセットして装置を動かせば、核酸抽出、精製、増幅、検出、解析までの工程を約2時間半で行うため検査の迅速化にも貢献。

検体と試薬をセットして装置を動かせば、核酸抽出、精製、増幅、検出、解析までの工程を約2時間半で行うため検査の迅速化にも貢献。

入院・手術を予定している患者さんのPCR検査を受け持つエリート インジーニアスが稼働するのは平日です。月・水・金は20人前後、火・木は10~15人前後、5日間で約90人のPCR検査に対応しています。患者さんが正午に来院すると鼻咽頭をぬぐって検体を採取し、午後から装置を動かすため、2台の検査機器をフル稼働させている状況です。

「21年7月から松戸市医師会の依頼を受けてドライブスルーPCR検査に、21年12月末から松戸市が取り組み始めた『松戸市民PCR検査助成事業』の協力医療機関として無症状者を対象としたPCR検査にも対応しており、それらの検査数も増える中、エリート インジーニアスが大活躍しています」

【今後の展望】アフターコロナにおいて期待される「がん医療」での活用

同センターでは、アフターコロナにおいてもエリート インジーニアスを有効に活用していきたいと考えています。なかでも期待されるのが「がん医療」の分野です。病理検査部門を率いる臨床検査技師の横山綾さんは次のように話します。

病理検査部門を率いる臨床検査技師の横山綾さんは、エリート インジーニアスのがん遺伝子検査への応用に期待する。

病理検査部門を率いる臨床検査技師の横山綾さんは、エリート インジーニアスのがん遺伝子検査への応用に期待する。

「がん医療の分野でも遺伝子検査が注目されており、ここ数年、国を挙げて整備されてきたのが同時に複数の遺伝子変異を調べる"がん遺伝子パネル検査"です。ただし、この検査を行えるのはがんゲノム医療拠点病院に指定された高度な医療機関に限られるため、残念ながら当センターでは対応できない状況です」(横山さん)

一方、トピックになりつつあるのが"コンパニオン診断"と呼ばれる遺伝子検査です。この検査は特定の遺伝子の異常を調べ、有効性が確立している薬剤の投与可否の判断に活用されるものです。最新のコンパニオン診断薬の中には複数の遺伝子や治療薬を調べられるマルチタイプが開発されており、PCR検査でもがん遺伝子パネル検査と同じことができるようになってきています。なかでも肺がんや大腸がんの分野では実用化されています。

「マルチタイプのコンパニオン診断薬が健康保険の適用になり、その試薬にエリート インジーニアスが対応できるようになれば、当センターでも直ちにマルチ遺伝子PCRパネル検査に取り組めるのです。最新のPCR検査機器が導入されたのは新型コロナがきっかけでしたが、がんの診断・治療の武器が一つ増えることはとても心強いです」(横山さん)

新型コロナの判定からがんの診断・治療まで――。松戸市立総合医療センターはエリート インジーニアスの特性を踏まえた運用に取り組み、臨床の最前線で患者さんの命を守ることにPCR検査を広く役立てています。

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